海外旅行では食べ歩き、買い物巡りもいいが、思い出づくりに自然のアドベンチャーにもチャレンジしてもらいたい。
高級タイプのリゾート地にでは決して味わえない冒険型の旅…
今回は、マレーシアはクアラルンプールから格安で行けるケタム島という小島のご紹介。
マレー鉄道とフェリーを乗り継いで夢の島に行こう!!
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マレーシアの隠れた観光地ケタム島
蟹以外には、特にコレといった特徴のない小さな島だけど、のどかな自然もあるので都会に疲れたらぜひ行ってみたい穴場的スポットなのだ。
ただし、時間にある程度余裕があれば…である。
というのも、クアラルンプールからマレー鉄道で往復約3時間、フェリー往復1時間、島内の食事と散策2〜3時間ほど、合計6~7時間程度は確保しておいた方がいいので、格安で行けるとはいえ時間がないとなかなかゆっくり楽しめない。
でも行ってみると、ガイドブックやネットに載ってない新鮮な発見がある。
まずクアラルンプールからの行き方から
首都クアラルンプールからマレー鉄道に乗って約1時間半
起点となるのはKLセントラル駅だ。
日本からマレーシアに着いてから市内までの行き方はクアラルンプール空港到着からのKLセントラル駅までの移動は直通電車が快適!ただし、ちょっと高いの記事をご覧ください
ちなみにマレーシアの鉄道は飲食禁止なので車内はとても綺麗だ。
運賃はなんと1人片道約6リンギット(今だと日本円で160円)、1時間以上電車に乗ってこの金額は破格といっていいんじゃないだろうか。
地図上KLセントラル駅を見ると、こうなっている。
切符(自動改札なので実際には紙の切符じゃなくて丸いトークンなんだけど)の買い方は簡単、自販機で路線と行き先の駅を選んで、人数を選択してお金を入れるだけ。
自販機でお金を払うと、丸いトークンが出てくるのでそれを自動改札機にかざして駅の中に入り、ホームに向かう。
一つだけ注意して欲しいのが、この自販機には大きなお札が入らないこと。
マレーシアのお札は、1、5、10、20、50、100リンギットと、何種類かあるけど、大抵の切符の自動販売機には10リンギット札しか入らない。ちなみに10リンギットは260円くらい。
なので、大きな額面のお札はあらかじめコンビニなどで飲み物を買ったりして小さくしておくといい。
道中のおやつも必要なことだしw
ちなみに、ここだけの情報
たいてい観光地では飲み物や食べ物は観光地料金になって高いんだけど、ケタム島の奥の駄菓子屋さんではミネラルウォーターを普通の金額(2RM、約55円)で売ってくれた。
観光客がメインターゲットのレストランは別として観光客の足元を見ない、素朴な島なんだ。
ちなみに100リンギット札(約2600円)は駅も含めて日常ではあんまり気軽に使えなくて、タクシーとかに乗ってもお釣りがないとか言って運転手に嫌がられることもある。繰り返すけど、大きなお札はこまめに使って10と20リンギット札を何枚か常に財布に入れておく習慣をつけるといいだろう。(マレーシアのタクシーはメーターが付いてても多くが交渉制で、観光客は近場の移動でも15〜20リンギットが相場なのだ)
マレー鉄道でケタム島へ行く
まず、クアラルンプール駅か隣の主要駅であるKLセントラル駅から乗車する。市内の他の場所から行くならポートクラン駅[Pelabuhan Klang]に向かおう。
ポートクラン駅は下の路線図の左下の駅だ。
途中で乗り換える方法もあるけど、ブルーライン路線だとKLセントラルから一本で行けるので、こちらが便利。
もし乗る電車が不安なら、その電車の行き先が車両の横の電光掲示板に表示されているのでよく確認すること。
この電車、海行きだけでなく現地の人の普段の足にもなっているので、始発から乗っても通勤時間だと大変な混雑に遭うことになる。満員電車で座ることもできないから着いた頃にはヘトヘト…なんてことにならないように、朝と夕方はなるべく避けることをお勧めする。
あと、エアコンがかなり効いてるので上着を忘れずに
僕は特に寒がりなほうではないけれど、外は30℃超えなのに、電車の中では長袖2枚着てもまだ寒かった。
どんなに暑い時期でも、東南アジアを乗り物で旅する時には防寒対策は必須なんだ。
クアラルンプールは市内の中心だけが発展してるから、電車が少し走りだ出すと田舎の風景が見えてくる。
ポートクラン駅に到着
KLセントラル駅から約1時間半かけてポートクラン駅に到着
小さくて何もないけど、雰囲気のあるいい駅だ。
トイレは駅を出てから…
古い駅舎に最新型の自動改札機が置かれている。
ちょっとホームの周りを見まわすと犬もいる。
人の姿はほとんど見かけない。
自動改札機にトークンを入れて駅の外に出よう。
駅を出てから振り返ると外観はこんな感じ。
また、駅を出るとすぐ赤色の無印タクシー運転手が大声で客引きをしてるけど、フェリーターミナルのほうを指差せば、すぐにあきらめる。
なにしろフェリー乗り場はポートクラン駅から歩いてすぐだから。
駅を出て右側の線路を超えて歩いていくと、3分もしないうちに港に到着。
フェリー乗り場の入り口は左右に分かれていて、右はインドネシア行きの国際フェリーが出ている港で、左が国内行きフェリー。
ケタム島は同じマレーシアなので、左のフェリーターミナルへ行く。
余談だが、国際フェリーターミナルのイミグレ職員に聞いたらインドネシア行きのフェリーは朝10:30出航で、しかも日帰りで往復するのは無理とのことで、最低でも往復には3日はかかるらしい。
もしインドネシアに日帰りで行けるなら行ってみたかったのに、やむなく断念。
フェリーターミナルでは、観光客にはお決まりの勧誘がある。
フェリーによって値段が少し違って、大まかにいうと
安い方が往復15リンギット
高い方が往復18リンギット
差額は3リンギットなんだけど、高いアリババフェリーの方が涼しくて快適なので、僕はこちらがオススメ。
ただ、安い船の方が現地の人の足になっているので遅くまで運行してる。
アリババフェリーは平日はまだかなり明るい17:30きっかりに最終便が出てしまう。
チケット売り場の親切なおばちゃんが、僕が最後の便に乗り遅れないように時間表を指差して、しきりにマレーシアなまりの英語で『ファイブ、サーティン!ファイブサーティン!!』と言っていた。
もし帰り道に乗り遅れるのが心配なら片道だけ買っておくのもアリかな。
往復で買ってもたいして往復割引はないし、僕が乗った最終便はだいたい15人くらいしか乗ってなかったから、きっと普段も満員になることはまずないだろう。
乗り遅れた場合には別のフェリーにするということもできる。
乗船券を買って、桟橋を渡って行くと、運賃の安いフェリーと高いフェリーが泊まって待機している。
ポートクランからケタム島行きフェリーに乗船
さっそくアリババフェリーに乗り込む。
赤と白のフェリーだ。
見かけは小さいけど中に入ると船室はかなり広い。
いつもワクワクしてくる。
船旅には男心をくすぐる何かがあるのだろう。
これがケタム島行きのアリババフェリーのチケットだ。
乗船後に中でスタッフによって切り取られ半券になる。
座席は多く、100座席以上はあるんじゃないかな。
シートはプラスチック製だけど、新しくて座り心地も良く、全座席下には救命ジャケットが完備してある。
リクライニング機能はない。
1階船室の後ろにトイレもあり、なかなか広くてきれい。
LCC飛行機なんかよりよほど快適かもしれない。
コンセントもあるのでスマホの充電もできた。
船内はエアコンがガンガンに効いててちょっと寒いくらいなので、屋上に出てみる。
ビニールの屋根と手すり、そしてベンチみたいな座席があってこちらは海上での見晴らしが良さそう。
でもやっぱり日差しが暑いから中に戻るw
出航すると同じような景色が続く。
マングローブじゃないんだろうけど、それに近いようなマレーシアの樹木がたくさん生えてる島を横切りながら、水しぶきをあげて帆走る。
しばらくすると海の景色も飽きてくるので船内のテレビを見る。
真新しいテレビで中国系のユーチューブの歌番組が流れていた。
意味は全然分からないけど、けっこう中国の歌もいいもんだな。
※ケタム島内はレストラン以外はきちんとしたトイレがないので、なるべくフェリーでトイレを済ませておくことをお勧めします。
ケタム島へ到着!
30分も航海するとケタム島が見えてくる。
船員が器用に港に船を横付けし、モヤイ(ロープ)を結ぶ。
写真が曇っているのは船内のエアコンが効きすぎて、カメラのレンズ曇ってしまったため。
いかにガンガンに船内が冷えていたかが分かる。
まるで冷蔵庫から出てきた麦茶の気分だ。
フェリーを降りて階段を上るとすぐ、島内へ続く桟橋がある。
そう、ここがケタム島への入り口だ。
桟橋を渡ると大きくKETAMと書かれたオブジェがある。多分学生さんとか団体客の記念撮影スポット用に作ったんだろうな。
オブジェの隣に無料トイレがあるので、これが最後のチャンスw
島に入るとすぐ左右にホテル兼レストランがある。
自転車を借りケタム島内を巡る
ここが一番大きなホテルであり、レストランなので中に入って行くとこれより大きな建物を見ることはない。
右側のホテルで自転車を借りた。
一日借りて5リンギット
日本円にすると約130円くらいだ。
店番をしてた店主のオヤジが最初は高めに吹っかけてきたけど、前もって下調べしておいたおかげで相場が分かってて良かった。
普通は乗り物をレンタルする時パスポートのコピーをとったりするが、ここでは何もない。
ただ前払いの料金を払うだけ。
きっと島から出る手段が船しかなく、自転車ごとフェリーで帰ることなどないからだろう。
レンタル用の電動バイクもあるけど、狭い島内を回るには自転車で十分。
むしろ、スピードの出る電動バイクだと、景色が見えない。
というか道が狭すぎて危なっかしくて周りを見てる余裕がない。
狭い島内を楽しむには自転車が最適だ。
自転車で走ること20分くらい。
お腹がすいたけど、島の内部にはあまり大きなレストランがないことに気づいて逆戻り。
さっきの自転車を借りたホテルの向かいのレストランに入った。
ケタム島の絶品のシーフード料理
海が見えるオープンな座席の多いレストランだ。
食事どきを過ぎていたせいか、客はほとんどいない。
いや、誰もいない。
海沿いのテーブルに座ってメニューをもらう。
カニ島と呼ばれるだけあって、海産物が多い。
中には野菜炒めもあるが、ほとんどがエビやカニだ。
メニューに値段は書かれていない。
はたして、客によって値段を変えるのか、時価なのか。
カニ料理が幾らか聞いてみる。
58リンギット。
1皿にしてはちょっと高い。
自転車の一日レンタル台の11倍とは…
アサリの酒蒸しと、ジャコの揚げ物にしてみた。
これだと2皿で42リンギット。
(これが後でちょっと後悔)
先程、島の中にはトイレがないと書いたが、このレストラン内にはトイレがあり、もちろん手も洗える。
食事の前に手を洗ってテーブルについて静かに海を眺める。
20分ほどで料理が届いた。
ちゃんとカートで運んでくる。
まずはジャコの揚げ物から
エビに似た食感で中がプニプニしてる。
マレーシア版エビフライといったところだろうか。
次にアサリの酒蒸し
これが。
絶妙!
日本の調理師としてあちこち食べ歩いて、これまでいろんな貝を食べてきたけど、正直これほどうまい貝は人生で初めてだった。
僕はアサリは砂抜きをしてからスパゲティボンゴレか酒蒸し、または汁物にするのが好きだけど、ここのアサリはまずモノが違った。
日本で手に入るアサリは貝の殻が薄くて中身も貧弱なことが多い。
旬の最も美味しい時期でも、なかなか栄養豊かで殻のしっかりしたアサリは手に入らない。
ケタム島のアサリは、まず殻が見たこともないくらい分厚い。
日本のアサリがまるでシジミに思えるくらい、重厚な貝のである。
そして重い。
身がしっかりしてるから、持ち上げるとアサリの大きさなのにハマグリの重さにかんじる。
きっと自然豊かな場所で生まれ育った野生の本来のアサリはこうなのだろう。
滋養に飛んだ海に育まれた天然物のアサリ。
これはもう何をしても旨いのは当然だ。
身も大きく濃い味が出ている。
調理法は至ってシンプルなのに、重厚で健康なアサリを使っているために、これ以上はないほど濃密な味が引き出されているのだ。
これをソースにして、もしパスタを和えたら。
妄想が止まらない。
先程オーダーに後悔があると書いたのは、これほど美味なアサリが出るのであれば、カニ料理は一体どんなものが出るのだろう。
ケチなことを考えず、いくら出してでも食べるべきだったという気がしたからである。
食事を終えて再び自転車に乗る。
島全体が満潮と干潮の影響を受けるので、幅1メートル、高さ2メートルくらいの桟橋のような道がずっと続く。
自転車ごと落ちたらマズい。
グーグルマップを見ながら、あちこち回る。
右に行くと、学校があり子供達があそんでいる。
左に行くと、住宅地が続き、だんだん道が狭くなってくる。
島民の電動バイクや自転車とすれ違う。
狭い道路には矢印で進路が描いてあり、日本の車道と同じ左側通行である。
住宅地を走りながら島民の生活を垣間見る。
穏やかにのんびりと過ごしている。
小さな島なので、きっと近所づきあいも大変だろうと思うが、案外のどかにも見える。
自転車ですれ違う若者が多い。
中学生や高校生。
たいてい離島は少子高齢化が進むがこの島は例外らしい。
かなりの子供達と会うことができた。
みんな島育ちなだけあって素朴だ。
そのまま不要な悪知恵を身に付けずにまっすぐな大人になって欲しい。
奥の方に自転車を走らせると、コンクリートの道から急に木造の道に変わる。
しかも古い、ところどころ割れている。
高さ2メートルくらいの道であるうえに、今にも壊れそうな木造の道を走る。
自転車のタイヤよりも大きな裂け目もある。
横幅はもう1メートルもない。
大げさではなく、走るのはかなり危険。
運動神経がなければ、ここでは生きられないに違いない。
つい、心理学の吊り橋現象を思い出す。
吊り橋を渡る時ドキドキするのを、誰かへの恋心であると錯覚するというアレである。
この島に子供や若者が多いのは、この現象が関係あるんだろうか…
なんて考えてしまう。
食事をしてから2時間くらいだろうか、ようやく島の隅っこまでたどり着いた。
景色がいい。
マレーシアらしい向かいの島がみえる。
ふと、飲み込まれそうな景色に現実を忘れそうになる。
首都から近くてもこんな素晴らしい場所があるのか。
おもむろに腕時計を見ると17時を過ぎていた。
確かフェリーの最終便は17:30。
急いで戻らなければ。
全速力で島の隅からフェリー乗り場の桟橋まで戻ると15分で着いた。
ホテルに自転車を5秒で返し、フェリーに乗り込む。
17:25
フェリーはこの日の最終便なので最後の乗客が乗り遅れないように少し待つかと思ったが、17:30ちょうどに容赦なく出発した。
ポートクラン港に戻ったのが18:00、夕暮れ始めた頃だった。
さらばケタム島。
なんだか異世界に行ったような、不思議な気持ちにさせられる島だった。
ただ、あのアサリの味は一生忘れないと思う。
ポリフェノール